日本のエネルギー転換が加速する中で、電力会社は、より強靭で柔軟性があり、かつ消費者を意識した新しい送配電網の構築に取り組んでいます。その中でも特に強力なツールの一つが、リアルタイム負荷分離(NILM)技術です。これはスマートメーターから直接、家庭内の大小さまざまな家電を識別することを可能にします。
家庭内の負荷を可視化できれば、ヒートポンプやエアコンの稼働状況まで把握でき、新たなレベルの「見える化」が実現します。この可視化は単に消費者をエンパワーするだけではなく、電力網全体にも波及します。電力会社は家庭ごとの詳細な負荷パターンを把握することで、より高度な需要予測、正確な計画立案、そして地域ごとの需要側柔軟性の大規模な導入を可能にします。
すべての分離技術が同じではない
しかし、すべての負荷分離ソリューションが同等というわけではありません。多くの技術は、根本的なアーキテクチャ上の制約により、次のいずれか、あるいは両方の課題を抱えています。
低解像度データの問題
多くの従来技術は「分離が可能」と主張しますが、実際には1秒から30分間隔という低解像度のメーターデータに依存しています。この解像度では、まるで「段落ごとに1文字しか与えられない状態で音声認識を試みる」ようなもので、洗濯機なのか食器洗い機なのかといった判断は困難です。家電レベルのインサイトをリアルタイムに提供することは不可能であり、例えば洗濯機を認識するには1サイクルが終了するまで待たなければなりません。
その結果、リアルタイム性を欠き、需要応答(DR)などの重要なユースケースでの価値は大幅に低下します。また、誤認識による精度低下や、小型家電(炊飯器や温水洗浄便座など)の検出不能も発生します。一部の技術は行動科学に基づく推定を補完的に利用していますが、実際には国や地域の平均値に基づく「推測」に過ぎません。これが、利用者にとって存在しない家電がレポートに表示されるなどの不信感につながる理由です。
クラウド依存型AI処理の問題
一部のソリューションは、常時クラウドにデータを送信し、クラウド上で家電を認識する仕組みを採用しています。しかしこの場合、通信費・クラウド保管費・解析処理費が膨大になり、数万世帯規模で導入すると技術的にも経済的にも成立しなくなります。デモンストレーションでは数軒の家庭で「うまく見える」かもしれませんが、実際の拡大展開では莫大なコストが発生します。
Senseのアプローチ
Senseはこれとは全く異なるアプローチを採用しています。
SenseのAIソフトウェアはスマートメーター上で直接動作し、クラウドではなくエッジでデータを処理します。これによりリアルタイムの高解像度データを効率的かつ低コストで処理でき、数百万世帯規模に容易に拡張可能です。
エッジでのリアルタイム分離
Senseの特許取得済みAIソフトウェアは、スマートメーターで直接稼働し、追加のセンサーや外部機器は不要です。スマートフォンのチップが高速処理を可能にするのと同様に、メーター自体がリアルタイムのエッジコンピューティングプラットフォームへと生まれ変わります。
- 高解像度波形解析(15kHz以上)
- 家電ごとに即時可視化
- クラウドやデータオフロード依存なし
- レイテンシ(遅延)ゼロ、事後分析不要
日本での最近の実証試験では、温水洗浄便座や卓上ヒーターといった小型家電から、ヒートポンプのような大型の電気負荷まで識別できることが確認されました。この精度を実現するには、従来の低解像度AMIデータでは不可能です。
優れた拡張性と適応性
Senseは累計7億時間以上の波形データと100万以上の家電シグネチャをライブラリ化しており、世界で最も進んだリアルタイムNILMを提供しています。
- スマートメーターにネイティブ実装
- 既存の電力会社バックエンドやスマートホームAPIと互換性
- 日本特有の家電に対応するローカル学習が可能
- ASICベースのアーキテクチャによる高性能・高効率設計
家庭の知見からグリッド全体へ
Senseは、累計7億時間以上の波形データと100万以上の家電情報を蓄積しており、すでに世界で最も進んだリアルタイムのNILMを提供しており、以下の特長を備えたソフトウェアを提供しています。
- スマートメーターにネイティブ実装
- 既存の電力会社のバックエンドシステムやスマートホームAPIとの互換性を保有
- 日本特有の電気負荷に対応した継続的なアップデートとローカルトレーニングが可能
ASICベースのアーキテクチャにより、性能と効率性を最適
ホームインテリジェンスからグリッドインテリジェンスまで
Senseのアプローチのメリットは家庭だけに留まりません。
メーターごとに分解処理が可能になると、各家庭はグリッドエッジにおける高解像度センサーとして機能するようになります。これにより、電力網の運用を次のように変革することができます。
故障検知:浮遊中性線やアーク故障などの異常を停電前に特定グリッド計画:変圧器レベルでの負荷パターン把握し、電気のストレスを予測し、アップグレードを最適化
- DER統合:EV、太陽光、ヒートポンプをリアルタイムで把握し、コストのかかるIoTの導入が不要
- 柔軟性:迅速に対応し、対象を絞り込み、拡張可能な需要応答を実現
- 顧客エンゲージメント:Senseの実績豊富な消費者向けアプリを通じて、高齢者ケアや家電の故障サポートを含む、住民にリアルタイムの家電レベルでのエネルギー知見データと通知サービスを提供
すでに動き出しているSense
Senseは世界の主要メーターメーカーと直接連携し、次世代スマートメーターに自社ソフトウェアの組み込みを進めており、追加ハードウェアや高額な改修は不要です。米国では、National Gridなどの電力会社が、ニューヨークとマサチューセッツで数百万世帯規模の家庭にSense対応メーターを導入しており、Rhode Island Energyもそれに続いています。
日本の電力会社が次世代スマートメーターの導入を準備する中で、エッジネイティブの負荷分解技術は、実証済みで拡張性のある道筋を提供し、家庭のインテリジェンスとグリッドの信頼性の間にある隔たりを埋めると同時に、コストとレイテンシ(遅延)を削減することができます。